独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

石川県の事業所における
ストレスの実態と
メンタルヘルスケアの
取り組みについての
調査研究報告

研究代表者 石川産業保健推進センター相談員 小山 善子
共同研究者 石川産業保健推進センター相談員 鳥居 方策

はじめに

 近年、技術革新、産業構造の変化、情報化、経済効率の要求、人間関係の問題などによって労働者のストレスは増加し、ストレス関連疾患が増えていて、職場のメンタルヘルスへの関心が高まってきている。身体の健康状態に関しては定期健康診断などでかなり管理されてきているが、各職場のメンタルヘルスの取り組みはまだ緒についたばかりである。石川県内の職場におけるメンタルヘルスに関するデーターも見あたらない。

 そこで、石川県下の事業所にアンケート調査を行い、ストレスの実態やメンタルヘルスケアの状況を検討し、若干の知見を得たので報告したい。

対象および方法

 石川県下の、主として50人以上の従業員を有す事業所(1998年11月30日現在)1,237社に調査票を郵送し、無記名による郵送回答で実施した。

1.職場のメンタルヘルスに関する調査(Ⅰ)
産業医又は産業保健担当者を対象とした。

2.職場のメンタルヘルスに関する調査(Ⅱ)
上記同事業所に勤務する40歳未満の人1名及び40歳以上の人1名を対象とした。

A.生活状況・勤務状況
B.仕事の状況

3.調査日平成10年11月30日現在

結 果

A.業種ではサービス業が134社と一番多く以下製造業122社、卸売・小売業、飲食店53社、建設業と続いた。

B.従業員規模では50~99人が181社(41.0%)、100~299人が187社(42.3%)、300~499人が26社、500~999人が17社、1,000人以上の大事業所10社であった。また、50人以下の事業所21社が含まれていた。

C.従業員の平均年齢では、多くは30歳代204社(46.4%)、40歳代193社(43.9%)であるが、50歳代が34社、20歳代が9社にみられている。

結 語

 石川県下の50人以上雇用する事業所(1,237社)にアンケート調査し、回答が回収された事業所450社とその事業所に勤務する897人の回答より、次の結果が得られた。

(1)事業所に配置されている職種は「衛生管理者が」85.4%、「産業医」85.6%と高率にみられるが、「保健婦又は看護婦」24.4%と少なく、その他の精神保健に関わる「精神科医」をはじめとした精神保健スタッフを配置している事業所は非常に少なかった。

(2)事業所で産業医または衛生管理者からみて、ストレスや心の不調で悩む人は、5%未満28.9%、5~9%は 19.1%、10~19%は17.3%、20%以上は10.7%と全体の76.0%の事業所で「居る」と回答している。「ほとんどいない」との回答の事業所は19.6%であった。

(3)職場でメンタルヘルスケアの取り組みが「必要」と考えている事業所は65.1%にみられているが、実際に「心の健康教育」を実施している事業所は19.8%であった。メンタルヘルスケアの取り組みの「必要性を感じない」との回答も24.7%にあった。

(4)生活状況では、単身赴任者が2.9%にみられ、部長・課長級では10.0%が単身赴任者であった。

(5)勤務状況では週休2日制(休日が月8日以上)は39.3%で、年齢が高くなるにつれ休日は少なかった。1日の勤務時間は8~9時間勤務は全体の67.6%であったが、40歳代では10時間以上が41.2%にみられた。勤務後の自由時間が殆ど無いとの回答は50歳代・60歳代で若い年齢層より多かった。

(6)起床時に疲れが残っている人は26.9%にみられ、時々残るも含めると59.2%にみられた。

(7)家計の状況が苦しいと回答した人は35.6%にみられ、30歳代と40歳代に多かった。

(8)生活の充実感がある人は全体の77.7%にみられたが、30歳代と40歳代では充実感がないとの回答が、20歳代と50歳以上の割合より多く25.0%にみられた。

(9)仕事上で身体のきつさは7割以上が普通と回答しているが、精神的きつさを感じる人は55.3%にみられた。特に40歳代で精神的きつさを感じている人が多かった。

(10)職場でストレス要因となり得る諸要因の中でも、「仕事上の責任感」、「仕事の能力」、「仕事の切迫感」、「長時間拘束」の順で負担を感じていた。年齢では40歳代、業種としては運輸業、電気・ガス・水道業、金融・保険業に勤務している人が、色々なストレス要因の状況におかれているようであった。

(11)仕事に将来性があると回答した人は58.7%で、約4割は将来性に不安を抱いていた。仕事への満足度は、73.8%は満足と回答していた。20歳代、30歳代と若い年齢層は高年齢者より将来に不安を持ち、仕事への満足度も低かった。

 以上の結果より、職場におけるメンタルヘルスの状況から、保健婦や精神科医などの精神保健に関わるスタッフが事業所に確保され、心の健康づくり対策を積極的に取り組むことが望まれる。また、働き盛りと言われる40歳代の生活状況、勤務状況などを考えるとストレス要因に一番さらされていて、特に,40歳代のメンタルヘルス面での対策が立てられねばならない。「職場の心の健康対策」に産業保健推進センターが、いかなる支援役割をになっていくかは今後の大きな課題となった。
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