独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

「石川県における
産業医活動の強化に
関する研究」

研究代表者 石川産業保健推進センター所長 佐藤 保
共同研究者 石川産業保健推進センター運営委員 前田 邦彦
(石川県医師会理事)
石川産業保健推進センター運営委員 中川 秀昭
(金沢医科大学公衆衛生学教授)
石川産業保健推進センター相談員 城戸 照彦
(金沢大学医学部保健学科教授)
森河 裕子
(金沢医科大学公衆衛生学講師)

概 要

 石川県における産業医による産業保健活動の現状を経済面も含めて把握し、産業医と事業所の双方の要望と今後の課題について明らかにすることを目的として本調査研究は実施された。対象は石川県下の従業員数50人以上の事業所1,080カ所と県医師会に登録されている産業医624名である。産業医による産業保健活動について、双方に独自に作成した質問票を送付した。回収率は事業所70.5%、産業医は36.2%である。回答結果は761事業所、226産業医、両者の一致する99件の3通りについてまとめて示した。 主な結果は以下の通りである。

1.産業医が契約している事業所数は、「1カ所」が39%と最も多く、「2カ所」24%、「3カ所」14%の順である。

2. 産業医の経験年数は「10-19年」が37%と最も多く、「5年未満」が25%、「5-9年」と「20年以上」が各19%である。

3. 産業医契約の形式については、事業所の回答の方が産業医の回答より「口頭による契約」の割合が明らかに多く、「石川県医師会 が定めた様式に基づく契約書」の割合が少なかった。

4. 産業医に支払われる報酬は、事業所・産業医双方の回答とも、「月額1-2万円」が最も多く「2-3万円」、「3-5万円」の順であった。

5.産業医に支払われる報酬の最頻値を事業所規模別にみると、50~99人では「月額1-2万円」であり、規模と共に増額し、300人以上 での最頻値は「月額3-5万円」になる。(図1)
事業所規模別の産業医報酬
6.産業医による職場巡視は、「年に数回」が40%と最多で、「ほぼ月1回程度行われている」は24%である。報酬別にみると、「ほぼ月1回 程度行われている」の割合は金額に応じて有意に高くなり、「3万円以上」では44%と明らかに高い。(図2)
報酬別産業医職場巡視状況
7.衛生委員会(安全衛生委員会)への産業医の参加は、「ほぼ月1回出席」は21%、「年に数回出席」が51%である。報酬別にみると、 群間に有意な差は認められなかった(産業医の回答結果より)。

8.現在実施している産業保健活動については、事業所の回答では、「健診の実施」が最多で、以下「健診の事後措置」、「保健指導・ 健康相談」の順であるが、産業医の回答では、「健診の事後措置」が最も多く、「保健指導・健康相談」、「健診の実施」の順である。

9.今後、事業所が実施して欲しい産業保健活動では、「健康・衛生教育」が最も多く、「保健指導・健康相談」、「メンタルヘルス」、 「健康づくり運動等健康対策の指導」、「健診の事後措置」の順である。一方、将来、産業医が希望する産業保健活動では、「健診の事 後措置」が最も多く、「保健指導・健康相談」、「健康づくり運動等健康対策の指導」、「健康・衛生教育」、「メンタルヘルス」の順である。 双方の要望はほぼ一致している。(図3)
産業医が将来希望する産業保健活動
10.産業保健活動の評価は、事業所の回答では、「十分な活動」との回答が35%、「十分ではない」が21%でる。一方、産業医の回答で は、「十分な活動」との回答が13%、「十分ではない」が50%であり、両者は有意な相違を示している。

11.産業保健活動実施上の問題点として、事業所は「従業員の関心が低い」が最も高く、以下「産業保健を担当する職員の研修が不十 分」、「経営上余裕がない」の順である。一方、産業医は困難点として、「産業医自身に時間的余裕がなく、十分な活動が行えていない」 が最多で、以下、「衛生管理者が十分活動していない」、「従業員の関心が低い」の順である。(図4,5)
事業所が産業保健活動を実施する上での問題点
産業保健活動上産業医が感じる困難点
 今後、産業医は事業所の求める健康管理面での活動を具体化すると共に、専門の職務である職場巡視や安全衛生委員会への参加を重視すべきである。また、事業主も産業医活動を保証する上で、経済的に適正な評価をすべきである。
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