独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

二次健診等給付の有効性に
関する追跡調査

石川産業保健推進センター相談員
(金沢社会保険病院)
南 昌秀
石川産業保健推進センター相談員
(石川県予防医学協会)
村 俊成
石川産業保健推進センター所長 佐藤 保

はじめに

 平成13年4月より実施された労災保険の二次健診等給付制度は、生活習慣病の予防を目的とする画期的な制度であるだけに、実質的な有効性が問われるところである。今回、県下の健診機関の協力を得て、二次健診受給者が受診後、結果をどのように受け取り、どう対処したかについて追跡調査を実施した。

対象・方法

 石川県下の全労災指定病院・健診施設にアンケートを送り、本調査の目的に協力可能か否か回答をお願いし、29施設より協力が得られた。調査票は1次と2次の2種を作成し、1次票は二次健診受診時に、調査目的を説明して同意の上記入していただき、2次票は葉書に質問項目を記載し、受診3ヶ月後、本人が無記名で推進センターあて郵送する形式をとった。各施設へは昨年度の健診数を参考に、必要予想数の調査票を発送した。特定のS施設では3ヶ月後、本人に二次票の記入を電話していただいた。調査期間は平成15年6月~16年5月の1年間である。なお県下における平成15年度の二次健診給付申請件数は415件であった。

結 果

 参加29施設のうち、11施設は受診者がなく、18施設より1次票236が回収された(回収率58.9%)。受診者の性別は男性200、女性36、年齢は50代をピークとし20-60代に広く分布していた。事業所の規模では50人以下の小規模事業所が34%を占めたが、1000人以上も11%あった。業種、職種に目立った傾向はなかった。39事業所に有害業務があったが、その内容は様々であった。43%に既往歴があり、高血圧、高脂血症、糖尿病が上位を占めた。1次の有所見項目では血圧、血中脂質、血糖値、BMIが多く、1次と2次健診の間隔は2ヶ月、3ヶ月以内が大勢を占めた。2次健診の項目は頚部超音波、血中脂質、血糖、心超音波、HbA1Cが主であった。殆どの受診者が特定保健指導を受けており(90%)、指導内容もよく理解されていた(99.5%)。給付申請手続きも95%が円滑であると回答した。
 2次調査票は89票回収され、1次票の37.7%、全体の21.4%に相当した。3ヶ月目に電話連絡をとったS施設の回収率は45/61(73.8%)と高率であった。会社への健診結果通知は54%が書類で、34%が口頭で行っていた。受診後医師と相談した者は57.5%、相談しない者は32%であった。二次健診は90.8%が役に立ったと答え、その内容として、健康に注意するようになった(61%)、生活スタイルが変わった(26%)、病気の早期発見につながった(12%)事をあげている。全体として給付制度を評価するもの(87%)がしないもの(10%)を大きく上回った。

まとめ

 評価の基礎となる2次票の回収が、受診者本人の意思にまかされたため、37.7%の低い回収率となったが、その回収は調査に係る健診施設の意図に左右されることは明らかなので、今回の調査によって、より長期間に及ぶ追跡調査が可能であることが示唆された。二次健診受診者の41.4%に有所見事項の改善がみられ、87%が給付制度を有効と評価した。
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