主任研究者 |
石川産業保健推進センター相談員 |
小山 善子 |
共同研究者 |
石川産業保健推進センター所長 |
佐藤 保 |
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石川産業保健推進センター相談員 |
城戸 照彦 |
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山形産業保健推進センター相談員 |
神村 裕子 |
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山口産業保健推進センター相談員 |
奥田 昌之 |
学 識 者 |
東京女子医科大学医学部公衆衛生学助手 |
野原 理子 |
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NTT東日本首都圏健康管理センター統括産業医 |
荒木 葉子 |
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関東労災病院働く女性外来 |
星野 寛美 |
はじめに
少子高齢化を迎え、働く女性の産業保健の問題は重要性を増してきている。これまで産業保健推進センターでは産業保健の推進に係る実践的な研究に幅広く取り組んできたが、働く女性の産業保健の問題については余り調査はなされていなかった。しかし、この問題については社会的重要性が増していることから、今後は調査研究の対象としても取り組む必要がある。
そこで、働く女性の産業保健に係る調査研究の今後の推進に資するため、今回、女性労働問題をテーマに調査研究を提案した石川・山形・山口の3産業保健推進センターが共同して、この分野に造詣の深い専門家の協力を得つつ、産業保健における女性労働者問題に係る調査研究の現状と課題を明らかにし、これに関して産業保健推進センターが行う調査研究のあり方を検討した。
就労女性の産業保健に関する文献レビュー
医学中央雑誌Webデータベース、Medline等から1998年~2005年で「女性就労者」、「職場のメンタルヘルス」、「ストレス」、「睡眠」、「精神健康」、「早産」、「流産」、「育児」、「婚姻」、「介護」、「三世代」、「当直」、「深夜勤務」、「労働時間」、「労働損失」、「欠勤」、「賃金」、「セクシュアルハラスメント」、「腰痛」、「疲労」、「頸肩腕障害」をキーワードとして文献検索し、「就労女性の産業保健」に関する原著論文を抽出し、就労女性の労働条件・家庭環境と健康及び就労女性のメンタルヘルス関連の原著論文を簡単に紹介した。「産業保健における女性労働者問題」に関する論文は多岐にわたって論じられていて、近年、その報告も増加しているが決して多いとは言えなかった。
「女性就労の諸問題への各産業保健推進センターの動向」アンケート調査
調査結果:(1)過去3年間の女性労働者の相談件数は総相談件数の3.0%、3.4%、3.7%と増加してきているが、(2)女性労働者問題に関する研修会の実施件数は1.2%、1.3%、1.5%と低調であった。(3)相談内容としてはメンタルヘルスが一番多く、次いで身体健康の問題、労働環境(労働時間・業務内容)であった。(4)産業保健推進センターとして女性労働者問題に対応する体制は13センターで「有」と回答がみられていて、相談員の配置、労働局雇用均等室やその他の行政機関との連携等の体制等がとられていた。(5)女性労働者問題をテーマにした調査研究は平成5年度から平成16年度の433件の調査研究の中の13件(3.0%)。(6)今後女性労働者問題として調査研究テーマとして4センターから「女性労働者の深夜・有害業務が健康に与える影響」、「就労女性の心の健康と生活状況」、「母性健康管理指導事項カードの利用度・効果・改善点」、「育児及び家事負担とストレス」が挙げられていた。(7)その他、「女性労働者問題に関して、産業保健の分野以外の労働条件や家庭環境など全体として考えていくべき」、「女性労働者の健康確保の課題、乳がん、子宮がんの検診項目にすることの必要性」、「女性のニーズにあった出産・育児の支援体制づくりと地域社会等における育児支援体制の整備の不可欠」、「女性労働者の育休取得後の職場復帰における職場環境の変化と本人の適応性」などの意見がみられた。
考察・結論
女性の職場進出によって産業保健の問題として就労女性の視点からの調査研究は重要課題となってきている。アンケート結果からも産業保健推進センターとしても「就労女性の健康」問題に係る調査研究の推進が不可欠である。
男女雇用機会均等法の制定、労働基準法の改正等で、母性保護の義務化と女性保護規定の撤廃で女性の職域の拡大、女性の多様な働き方がますます進んでいくと思われる。就労女性に関する一般の意識や企業体の取り組みも変化してきているが、これら職場環境の変化が、働く女性の身体的・精神的健康にも影響を与え、種々の問題をはらむ可能性が予測される。就労女性の健康と労働環境の関係を明らかにし、健康上の支援、職場環境の整備に関する研究の発展が望まれる。
産業保健推進センターとしての役割を踏まえて広域性を生かした共同での大規模横断的疫学的調査研究や地域特殊性を考慮した調査研究がなされねばならない。又、就労女性を取り巻く諸問題を色々な視点から且つ包括的にとらえ、地域の産業保健活動や関連行政施策への活用・ニーズに応えられる調査研究が望まれる。これらの達成のために産業保健推進センターを核としてデータベースの整備、産業保健推進センター相互の連携、センターと関係者・機関のネットワーク構築が必要と思われた。
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