独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

「健診機関から事業場への
健診結果通知の様式等に
関する実態調査」
に基づく
健診機関への
提案に関して

石川産業保健推進センター 産業医学相談員 堀口 優
 平成14年2月に「健診機関から事業場への健診結果通知の様式等に関する実態調査」を実施し、いくつかの問題点が浮き彫りとなりました。これらに付け加え、さらに事業場において、健診結果の通知、保存、有所見者についての産業医等からの意見聴取、保健指導などが円滑に行われるよう、石川産業保健推進センターの相談員、スタッフ一同が検討した結果をまとめて、石川県内の主な健診機関へ通知するとともに、さんぽ いしかわ 平成15年1月(第19号)に「健診機関から事業場への健診結果通知の様式等に関する実態調査」の結果に基づく改善方策の提案として掲載させていただきました。その後、数カ所の健診機関よりご質問をいただいたこともあり、若干の解説をさせていただきます。
 まず健診記録の保存ですが、事業場の記録の保存として単年の健診結果が複数名分一覧となった様式は不適当です。それは、産業医等が事業場で保健指導を行うときに前回や前々回の健診結果を考慮して総合的に判断することが不可能になってしまうからです.さんぽ いしかわ 平成15年1月(第19号)に掲載した様式第5号(2)に準じたものを使用してください。ここで、様式第5号(2)は5回分の健康診断を保存できることになっていますが、1枚の用紙のスペースと見易さを考慮すれば、今回の結果を含め3回分記録することができれば保健指導は可能と思われます。ただし、事業場の健診結果保存はあくまで5年分です。
 次に健診項目について、空腹時の採血ではLDLコレステロールを換算して記録し、空腹時でない採血の場合は血糖検査のほかにHbA1Cを測定した方がより正確な診断が可能となりますので考慮してください。
 人間ドック、政府管掌健康保険による生活習慣病予防健診などを労働者個人で受診するが、結果を事業者に提出することが予定されている場合があります。私も嘱託産業医、または健康管理医としてこれらの健康診断結果を見る場合がありますが、しばしば医師(産業医等)の意見欄がないものを見かけます。事業場での事後措置を円滑に進めるためにも、ぜひ医師(産業医等)の意見欄が欠如している機関では、早めに設けていただきたいと考えます。最近では健康診断結果をコンピューターの組み込み式にて印刷発行する機関が多いと思われますが、1年に1回程度小さな変更が生じる場合もあるでしょう。多少の費用はかかりますが、労働安全衛生法による一般健康診断を充実させていくためにも、ぜひそのような機会に付け加えを実施していただきたいものです。
 また、医師(産業医)の意見欄では、通常勤務、就業制限、要休業、作業環境管理見直し、作業管理見直し等をあらかじめ印刷しておき○をつけるだけにする、最下欄に産業医等のメモを設ける等の工夫を凝らして、実際に産業医が事後措置を記録しやすいような様式を提案させていただきました。
労働者50人以上の事業場では所轄労働基準監督署に定期健康診断結果報告書を提出しなければいけません。これに必要な有所見者集計表を作成するのは各事業場では時間がかかるため困難な場合が多く、健診機関で事業場毎に集計表を作成添付すると重宝されます。ただし注意しなければいけない点として、「所見のあったものの人数」(有所見者の総数)は労働安全衛生規則上の健診項目のみであって、人間ドックや政府管掌健康保険の生活習慣病予防健診の検査項目(たとえば白血球数、ALP、尿酸など)は有所見であっても集計してはいけないということです。
 事業場へ健康診断結果を発送するときには、事後措置を実施することが必要である旨を通知してください。産業医や衛生管理者、その他の産業保健スタッフが充実している事業場ばかりではありません。従業員50人未満の事業場でも健康診断後の事後措置は義務づけられていて、労働基準監督署の監査で産業医等の事後措置や保健指導が未実施のため行政指導を受けているということもあります。そのような従業員が50人未満の事業場は石川県内5か所にある最寄りの地域産業保健センターや、石川産業保健推進センターが取り扱う小規模事業場産業保健活動支援促進助成金などを利用して産業医等からの事後措置を受けるよう情報提供することが必要でしょう。
 労働衛生・産業保健において重要な柱である健康管理は健康診断を受診するだけではなく、事後措置を実施して初めて過重労働による業務上の健康障害や業務関連疾患を予防するなど意味のあるものとなるわけです。健診機関の皆様方には、事業場の産業医等や他の産業保健スタッフが事後措置を円滑に進めることができるよう工夫し、努力することがひいては産業医制度を維持・発展させるためにも非常に重要だと考えていただきたいと存じます。
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