独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

産業保健Q&A

労働衛生工学

Q1
先日のセミナーで、日本の労災死亡事故発生率はイギリスの約5倍で大変悪いとお聞きしましたが、労働衛生面では如何ですか。
A1

 現代の社会システムは、複雑・高度・大型化し、更には、効率化と低コスト化が強く要求されているため、安全衛生面でのリスクが高く、労働災害や健康障害が発生し易い状況にあります。
 このため、企業での労災事故の発生は依然として多く、我が国の労災死亡事故件数は世界の主要50ヶ国の中でワースト5位(1996~1998年の国際比較)であり、また、最も少ない国はISO発症の地である「イギリス」ですが、この国の平成11年の労災死亡事故件数は204件で、同年の我が国では1,998件でしたから、イギリスの約10倍(人口比では5倍強)も多いという災害多発国です。
 その理由をズバリ言うならば、労災防止手法が「イギリスは科学的手法」であり、「我が国は非科学的手法」であると言わざるを得ません。今後、労災事故防止面での先進国になるためにはイギリス型の「科学的手法」が不可欠であります。
 一方労働衛生面では、以上のような明確に比較するデータがないため、私の直感で言わせて頂くならば「労働衛生は安全面に比し、更に悪い」と言わざるを得ません。
 例えば、工場内でトルエン等の有害物質を使用しているにも拘わらず、安全衛生法で設置が義務付けられている「局所排気装置」が設置されてなく、また、あっても吸引性能が不充分なため効果がない等、労働衛生管理が適性に行なわれていない事業場が多いという実態にあります。
 その理由としては、安全面での「リスクに遭遇すると即死傷する」ことが少なく、有害物による一定の暴露を受けても直ちに健康障害を起こすことがないためと考えられます。
 しかし、有害物暴露による健康障害は確実に発生します。
 よって、労働安全衛生法等で定められている、各種の健康障害防止対策を確実に実施することが不可欠となります。

(小林労災予防コンサルタント事務所代表 小林眞次)

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