独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

産業保健Q&A

労働衛生工学

Q2
最近、石綿(アスベスト)含有製品の製造禁止に係る労働安全衛生法の改正がされたと聞きましたが、どのような中身か教えてください。
A2

 石綿(アスベスト)を呼吸等により吸引すると、肺がん、悪性中皮腫、石綿肺を発症することが知られています。平成7年に、労働者の健康障害防止の観点から、石綿のうちアモサイト(茶石綿)及びクロシドライド(青石綿)若しくはこれらをその重量の1%超えて含有する石綿含有製品の製造、輸入、譲渡、提供または使用が禁止されました。それ以外の石綿については代替化が困難であったこと等から、局所排気装置の設置、呼吸用保護具の使用等の暴露防止対策をした上で、その管理および取り扱いに留意してきました。近年、これらの石綿に替わる代替品の開発が進んだことから、これまでの石綿に加えてクリソタイル(白石綿)、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトと呼ばれる石綿を含む石綿製品の製造等を禁止することとなり、平成16年10月から、石綿含有製品の製造禁止に係る労働安全衛生法施行令の一部を改正した政令が施行されました。
 製造等が禁止される石綿含有製品は、(1)石綿セメント円筒、(2)押出成形セメント板、(3)住宅屋根用化粧スレート、(4)繊維強化セメント板、(5)窯業系サイディング、(6)クラッチフェージング、(7)クラッチライニング、(8)ブレーキパッド、(9)ブレーキライニング、(10)接着剤の10種類が該当します。これらは煙突、地下埋設ケーブル保護管、工場等の建物の屋根や外装、間仕切壁、住宅屋根板の上に葺く化粧板、車のクラッチやブレーキ等の摩擦材部品に用いられています。
 また、左官用モルタル混和材に「無石綿、ノンアスベスト」等と表記されているにもかかわらず、クリソタイル(白石綿)を含有する製品があるとされ、乾燥した粉体をモルタルセメントに混ぜる際、粉塵に暴露されないよう特定化学物質等傷害規則等の関係規定に基づいた防止措置を講ずる必要があります。
 さらに、石綿の使用されている建物の解体・改修等の作業を行うときには、石綿除去作業をおこなう作業場所を隔離する必要があり、石綿が吹き付けられた耐火建築物や準順耐火建築物の石綿除去作業では作業計画を労働基準監督署に届ける必要があります。
 石綿を製造または取り扱う業務に常時従事する労働者に対し、事業者は6か月に一度、石綿に関する健康診断を実施することになっています。また、離職した労働者に関しては、一定の条件を満たす場合、都道府県労働局長宛てに健康管理手帳の交付申請が可能で、手帳の交付を受けた方は年2回、石綿に係る健診を無料で受けることができます。石綿暴露暦のある労働者に発生した疾病に対する労災補償や石綿に関する規制・健康管理についての詳細は都道府県労働局または最寄りの労働基準監督署へお問い合わせ下さい。

(金沢大学大学院自然科学研究科教授 田村和弘)

非石綿ブレーキパッド(石川トヨタ自動車提供)
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(石川トヨタ自動車提供)
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