独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

産業保健Q&A

労働衛生関係法令

Q10
最近、産業医の契約を結び、はじめての安全衛生委員会に出席しました。そのあと、職場巡視を行いました。衛生管理者は今年免許をとったばかりの方で事業場内を順番に案内してくれました。次回の安全衛生委員会出席の際にも巡視をする予定です。巡視のポイントや参考となるチェックリストがありましたら教えてほしいのですが。(新米産業医)
A10

 産業医としてこれから安全衛生管理活動の推進に力を発揮されるよう希望します。さて、ご存知のように、職場巡視は法律上、産業医の職務とされています(労働安全衛生規則第15条)。
 実際、行ってみますと職場巡視は奥が深いことがわかります。そもそも、職場巡視の最大の目的は、職場の中の潜在的な、また表面に現れた危険・有害要因を発見すること、次いで、その対策を講じ、災害を未然に防止することです。従って、現場の業務内容や労働者の作業内容などを十分知ることが必要です。回を重ねながら、要領やポイントも見えてきます。あせらず、取り組んでください。
 まず、衛生管理者とよく相談しましょう。事業場内の安全衛生上の課題を確認する作業をしてください。衛生管理者と産業医は車でいえば両輪の間柄です。
 課題を箇条書きで確認したら、巡視の場所、ポイントはおのずと見えてきます。
 産業医の巡視は、労働者には、いわば第三者から見られているわけで、自然と安全衛生意識を高める効果も期待できます。
 但し、一方的な指摘ばかりでは、労働者も警戒し心を開いてくれません。問題点はわかっているけれど、解決が難しいこともあるでしょう、良き理解者であることも巡視者に求められます。産業医や衛生管理者は、安全衛生活動の「支援者」であって、追及者ではありませんから。
 巡視のポイントは、事業場も様々ですし、現場の状況も千差万別ですので、すべてに適用できるものはありません。
 一例として、最近、多くの事業場で作業者が増えているVDT作業職場向けに、チェック項目を掲載しましたので、参考にしてください。
 なお、いろんな有害職場向けに、茨城産業保健推進センターで作成した、「職場の衛生管理チェックリスト集」が参考になりますのでご覧ください。
http://www.ibaraki-sanpo.jp/pdf/001checklist_all.pdf
 そのほか注意いただきたいのは、巡視の結果のフォローです。安全衛生委員会に報告することはもちろん、必要な場合は、事業場のトップへ文書で勧告しましょう(法律で権限も規定されています)。巡視結果には、たとえば、改善すべきこと、改善が難しいので、事業場全体で検討すべきことなど、記録として残しておきましょう。次回の事業場訪問の際には、前回指摘事項等を確認するようにしてください。
 PLAN→DO→CHECK→ACTION(PDCA)サイクルをしっかりまわして、職場がどんどん働きやすい環境となるよう、衛生管理者と協働してがんばってください。

石川産業保健推進センター相談員 古川眞之祐

参考資料
〔VDT職場の
簡単チェック項目〕

 椅子、机、ディスプレイの状態、室温、休憩室など職場環境の衛生管理が大切です。
 また、作業環境と並行して、休止時間や連続作業時間の管理規程なども巡視の際に作業者に確認してみるといいでしょう。
 ハードとソフト両面のチェックが巡視の基本です。

  • 椅子は高さが可動式で作業者ごとに調整が可能ですか?
    作業者の身長が違っても足裏が床につく状態に調整できることが大切です。
  • 椅子は深く腰を掛けられ、背もたれで背中が十分支持できるものですか。
  • 机の高さが適切(65センチ~70センチ)で、前腕が机の面に水平、肘角度が90度以上ですか。
  • デイスプレイの上端は、目線よりすこし低め(軽く見下ろす程度)ですか。
  • ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、窓にブラインドやカーテンを設け、適切な明るさとなるようにしていますか。
  • 夏、室温が低すぎることはないですか。
  • 職場全体でリフレッシュする時間を決めていますか。
  • パソコン作業時間が長い職場では休憩室があり、ゆったりできるソファーなどありますか。
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