独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

産業保健Q&A

産業医学

Q1
認定産業医になって、産業医の務めの一つである職場巡視をどのように考えたらよいでしょうか。名前だけの産業医が多いと聞きますが。
A1

 せっかく日医認定を取得しても実質的に活動をしていない産業医が多いのは事実です。困ったことです。
 契約した事業所を持たない産業医があるかと思えば、一方では多数の契約事業所をお持ちの産業医もあります。私の経験ではほんの数カ所の契約事業所だけで結構、忙しいはずです。若く元気な産業医に仕事を分けてあげて欲しい。
 世の事業所の中には規則だから仕方なく産業医と契約しているが、本心は来て欲しくないと漏らす方もあると聞きます。産業医に見て欲しくないことでもあるのでしょうね。
 毎年のように規則に改正があり、医学と同様にいろいろな技術革新が著しい現今では、産業医も世間の進歩に後れず常に勉強が大切です。私は現場の掌握なしで務めは果たせないと日頃から強く思っています。その事業現場を見ることで得られるものは非常に多い筈です。
 昨今のように不況で成績を上げにくい環境にある企業では、いつの間にか現場従業員に無理や不都合がシワ寄せされて心身共に困った状況が多くあるようです。余剰人員を減らし能率化を進めるだけでもストレスが生じるのは当然。事業所の幹部と話をしたり健康診断の結果を見るだけでは現場の実状はつかめません。生の声を聞きましょう。不健康環境に慣れてしまっている現場に遭遇する事もあるからです。
 何を原料にして何を作っているか、それらは有害物質でないか、その過程は大丈夫か、有害環境による健康阻害や身体危険は無いかなど考える事がたくさんあります。見ること、聞くこと、考えることとこれらの総合で現場を理解しなくてはなりません。その理解が果たして最良かをすぐに判断しなければならない事態も起こり得ます。日頃の勉強や知識の集積がそこで役立つのです。医学のみならず社会の情勢分析に詳しく、常に前向きな姿勢こそが求められます。
 健康診断や特殊健診での異常値を見落とさず、現場の状況とつきあわせて考える、この姿勢があればきっと良い産業医になれると確信します。世間ではこんな産業医が求められるのです。名前だけの実質を伴わない産業医は淘汰されるべきです。常に世間に目を開き科学の進歩に後れず努力するためには、生きた現場を見るとこが必要です。その一歩は巡視です。現場巡視をせずして産業医活動はあり得ないと断言できます。

(アカシアクリニック院長 宮田浩)

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