独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

産業保健Q&A

産業医学

Q3
「血液検査で胃がんの診断がつく?」
A3

 「血液検査で胃がんかどうかがわかる」ってはなし、聞いたことがあると思います。これは、血液の中の「ペプシノゲン」という物質を測定することにより、胃がんになりやすい傾向のある人を見つけ、その人を綿密に精密検査し、さらに十分なフォーローアップをすることにより少しでも早く胃がんを見つけることができるということから言われたことなのです。決して血液検査結果で胃がんと診断されるわけではありません。
 「ペプシノゲン」とは、胃粘膜から出る「ペプシン」という蛋白分解酵素の一種のことです。このペプシノゲンには「I」と「II」があり、正常な胃の人の胃粘膜と血液の中では、この両者は一定の割合で存在しています。
 ところが、胃粘膜の老化に伴いこの二つのペプシノゲンの量とそのバランスが崩れてくることがわかり、それがすすむことによって、その数値が胃がんの前段階ともいわれる「胃粘膜の萎縮」すなわち「慢性萎縮性胃炎」の状態をうまく反映していることがわかってきました。つまり、胃粘膜の老化現象である萎縮が進行すると、慢性胃炎や胃がんが発生しやすくなることにより、血液検査で血清ペプシノゲンを検査することで胃がんの人、あるいは胃がんになりやすい人を見つけられるようになったというわけです。
 でも、血清ペプシノゲンの値が異常だから、胃の粘膜が老化しているから、即、胃がんだというわけではもちろんありませんし、逆に、ペプシノゲンの値が正常だからといって、胃がんにはならないというわけでもありません。しかし、血液検査で胃がんになりやすい危険性が高い人を簡便に見つけられる方法であることは確かなようです。
 いずれにしても、現在のところは、胃がん検診の時に、胃レントゲン検査とともに行われることが有用ではないかと思われます。
 胃の健康度がわかるという「ペプシノゲン検査」についてお話しましたが、いずれにしても、まず、日頃から暴飲暴食に注意するなどして、胃腸を大切にしていくことが、一番肝要だということでしょう。

(香林坊メディカルクリニック副院長 小山信)

一覧に戻る

CLOSE