独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

産業保健Q&A

産業医学

Q6
先生の講習会を聞いた時に「安全衛生委員会では、労働安全衛生の仕事をしてはいけない」とおっしゃっていました。実は、当社では毎月1回、各職場から安全衛生委員を集めて安全衛生委員会を開催し、労働安全衛生の年間計画に基づく実施事項の具体的な実施方法を検討して、それぞれの委員に職場での安全衛生活動の中心となって頑張ってもらっているのですが、それでは問題があるのでしょうか?
A6

 結果的には、「問題がある」とお答えします。おそらく、日本の安全衛生活動の誤解の多い部分のひとつではないかと思います。まず、安全衛生委員会に関する法の条文を読んで下さい。おそらく、多くの労働安全衛生担当者が間違えるのは、法律を読んでいないことが原因ではないかと思われます。法を読めばご理解いただけると思いますが、労働安全衛生法には安全衛生委員会で労働安全衛生の業務を行えとは書いていません。書いてあるのは、「調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせる」とあるように、あくまでも調査審議する「諮問機関」なのです。それを理解せずに会社で社員を集めると、どうしても雰囲気としては「各職場のリーダーとなって、労働安全衛生活動を推進する・・・」となってしまうわけです。しっかり法の趣旨を理解して下さい。
 従って、安全衛生委員会では何も決定はいたしません。あくまでも意見を出し合って「審議する」のです。その審議内容を議事録にまとめて、審議結果を残しておくのですが、普通は法律に書いていなくても事業者は内容を読んで理解しますし、労働者に審議内容を知らせないって事もある種の人権問題と言えないことはないでしょう。
 委員の半分は労働者の利益を代表する者ですから、この人達が意見を言いやすい環境を作ってあげることが大切です。一般的には、労働者は、会社に対して「あそこをもっとこうして下さい」って言い難いですよね。会社は、労働者側委員にその言い難いことを言って頂くことをお願いしているわけですから、それなりの配慮が必要です。また、労働者側委員も、積極的に改善提案を出すなどの建設的な態度で参加することが良い安全衛生委員会を作る重要なポイントとなります。
 そんなことも考慮しながら、安全衛生委員会はなるべく小さな規模で開催することが成功するためのポイントではないかと思います。
 質問者の会社で行われている会議は、安全衛生委員会ではなく、安全衛生推進会議とでもいう仕事の進め方を話し合うための「会議」です。「労使が集まって、安全衛生について審議する」ための委員会ではなさそうですね。普通は、そうなっているケースが多いのも事実であると思われるのですが、別に安全衛生委員会を組織することをおすすめします。

(労働衛生コンサルト 事務所プライム代表 木田哲二)

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