独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

産業保健Q&A

産業医学

Q7
最近、運動不足ぎみなので、ウォーキングを始めようと思っています。なかなか歩く時間がとれないのですが、ウォーキングのコツと効果について教えてください。
A7

 ウォーキングは有酸素運動の代表です。特別な器械や施設を使うことなしに、いつでも、どこでも、一人で行うことができます。ウォーキングとジョキングの違いは、ジョキングは両足が空中に浮く瞬間があり、ウォーキングはどちらかの足が地面に接しているという点です。
 万歩計でどれだけ歩いたか評価することが可能なため、ウォーキングを対象として多くの研究が行われています。インスリン感受性改善(糖尿病の改善)に有用であるとされ、1日の歩数が多いほどインスリン感受性がよく改善すると研究報告されています。中高年女性では1日当たりの歩行数が多い方ほど内臓脂肪が少ないことも報告されています。このように、生活習慣病の予防・治療に最も適した運動と考えられているわけです。
 実際にウォーキングを行う前に (1)強度 (2)時間 (3)頻度 の理解が必要です。
(1)強度:
最大酸素摂取量(全身持久力)の50~60%とされています。会話をしながら運動が続けられる速さで、息がやや弾んだり、体があったまって少し汗ばむ程度がよいでしょうか。通勤で歩くなら、帰りよりも、時間制限のある行きが効果があるともいわれています。
(2)時間:
脂肪が燃焼するという10分~15分以上、できれば30分程度が望ましいでしょう。
(3)頻度:
 頻度はとても重要です。運動で消費するエネルギー量が同じであれば、運動を2回で行おうが3回に分けて行おうが同じ結果が得られそうですが、実際には3回以上でなければ効果はないとされており、週に3~4回行うことが必要とされています。
 従来、運動の効果を得るためには体力の向上が必須であると考えられ、糖尿病などの運動療法においても最大酸素摂取量の50%以下の強度や、頻度が週2回以下、時間が10分以下の運動では体力の向上につながらず、治療効果も少ないとされていました。
 しかし、最近、体力の向上には必ずしも結びつかない中等度以下の強度の運動でも、消費カロリーを高めることでインスリン感受性改善効果や高血圧に対して降圧作用などがもたらされることが明らかになり、週1~2回のウォーキングでも効果が全くないわけでないとも言われています。
 普段の生活の中でウォーキングを取り入れる、例えば、エレベーターを使わずに階段を上る、上がったら下がるなど基本的な動作を自分の足で行うことで、歩数を増やすことができるでしょう。1日1万歩目指して、さっそく今からウォーキングに取り組みましょう!

(金沢社会保険病院 健康増進部長 南昌秀)

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