独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

産業保健Q&A

メンタルヘルス

Q1
元来、口数が少なく目立たない人だが仕事はまじめにしていたのが、2、3ヶ月前頃より、仕事中呆っとしていて、十分仕事ができなかったり、時に机をガタガタ音をたててみたり、突然上司や同僚に訳のわからない文句を言いに来ることが再々みられ、どうも様子がおかしいので本人に受診をすすめているのだが、なかなか応じなくて困っている。こんな場合はどのように受診につなげればいいのですか。(職場の上司より)
A1

 職場で不適応状態がみられたり、心の病気になると、日常生活に何らかの「変化」として現れてきます。本人自身が気づいている場合もありますが、ご質問のようにむしろ周囲が気づいていて、問題行動のため職場で本人への対応に困らされる場合がみられます。
 本人が悩んだり、相談をしてくる場合は十分に話を聞いて受診へと結びつけることもスムーズにできますが、本人が自らの問題として相談に応じない場合、心の病気の場合はえてして本人の自覚が乏しく、即ち専門的には「病識」がないと言いますが、なかなか専門家への相談や医療機関への受診を拒否し本人の対応に苦慮させられることがあります。しかし、本人自身も時に「もし精神病だったらどうしよう」などと、とても不安を持っていることもありますので、偏見を持たずに本人の立場になって問題を受け止めて聞いてあげてみて下さい。その際、プライバシーを守り、対応を無理せず、柔軟な態度で機会をうまくとらえ相談にのることが大切です。また、上司でなく親しい友人・同僚の言葉が案外と素直に受け入れることもありますので職場内のキーパーソンを見つけることも役に立ちます。本人が病気と理解できず、直に受診をすすめると、逆に「精神病扱いにするのか」と怒ったりすることがあります。受診をすすめるに当たって家族に働きかけることは不可欠です。でもその家族が案外と本人の変化に気づいていないことがあり、家族も本人同様、病気として認めたくないことがありますので、職場での変化をきちんと説明し、まず家族の理解を得ることが必要です。受診は本人だけでなく家族、事情をよく把握している上司の同伴が望ましいです。本人の状態によっては、例えば自殺、人への危害など緊急事態もあります。そんな際は躊躇なく専門家(窓口は保健所)に連絡をとり、適切且つ早急な対応が望まれます。受診することには本人、家族ともに動揺したり、病気への不安、他人の評価・偏見、将来への不安など抱いているはずですので、本人への気持ちを思いやり、身体の病気と同じく周りの人も偏見を持たずに接してあげることが大切です。

(金沢大学医学部保健学科教授 小山善子)

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