独立行政法人 労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター ishikawa

石川産業保健
推進センターの
業務評価分析調査

主任研究者 石川産業保健推進センター所長 佐藤 保
共同研究者 小中 勉、広川 雅彦、鈴木 俊一

はじめに

 石川産業保健推進センターは平成9年に開設され、平成14年で5年を経過、平成16年には独立行政法人へ移行する。この節目にあたりこれまでの業績を評価し、新しい社会情勢のニーズに応じた今後のあり方を検討するための基礎資料とする目的で以下の調査分析を行った。

調査対象および方法

1)石川県下の全産業医470名、2)県下の従業員50人以上の事業場より無作為抽出した405事業場およびその産業保健担当スタッフ405名、3)石川労働局の安全衛生課長および県下5労働基準監督署の安全衛生主務課長、4)県下5地域産業保健センターの事務長とコーデイネータを対象に、質問票によるアンケート調査を実施した。3)4)についてはヒアリング調査を併用した。調査時期は平成15年1月~2月である。

調査票の回収結果

 各対象の無効件数を除いた有効対象数、回収数および回収率はそれぞれ産業医464,219, 47.2%;事業場 401, 215, 53.6%;事業場スタッフ405,218, 54.4%;地域センター5, 5, 100% 労働局・監督署6, 6,100%,合計1,277, 663, 51.9% であった。

満足度、需要度の計量化

 満足度、需要度の評価は下記の規準によって計量化し評価した。1)5区分の場合;満足100点、まあ満足75点、どちらともいえない50点、不満0点、2)4区分の場合;よく知っている100点、利用したい100点、聞いたことがある75点、わからない75点、はじめて知った0点、利用するつもりはない0点。
評価値=Σ(点数X 該当項件数)/ Σ件数

結果の横断的、縦断的比較

 横断的には平成13年度に実施された神奈川、岐阜、徳島、鹿児島4県のセンターにおける評価分析調査結果と、縦断的には平成9年度に実施された石川県における評価分析結果と対比した。

結果と考察

(1)センター認知度の比較・推移
 センターの認知度は、産業医で平成9年度の27.2%から62.1%へ、事業場で11.9%から38.5%へと大幅に増加した。これに「聞いたことがある」群を加えると、産業医が91.8%、事業場が83.0%と認知度は上がっている。全国レベルで見てもほぼ同等の認知度であり、この5年間に推進センターの認知度は社会的に高まったと結論してよいと思われる。

(2)センター利用度の比較・推移
 これまでセンターを利用したことがあるものは、産業医で45.3%、事業場スタッフで38.7%と利用したことがないもの、各53.2%、54.6%を下回っている。しかし内容的には産業医では平成9年度の9.9%から14年度45.3%に、事業場は18.5%から38.7%に増加しており、この数値は全国レベルの産業医42.5%、事業場27.5%を超えている。したがって、未だ努力目標は残されるものの、認知度とともに利用度も順調に増加している。

(3)利用意向の比較・推移
 今後の利用状況を推定するため、利用者の意向についてたずねると、「是非利用したいもの」の頻度は平成9年度に比して産業医、事業場とも20%前後で推移しており、これに「利用してもよい」とするものを加えると75%前後となっている。この数値も全国値と同等、ないし僅かに上回っており、将来、活動をさらに推進すべき余地を残している。

(4)サービス未利用の理由
 今後も「利用するつもりはない」と答えたものにその理由をたずねた。産業医では「推進センターを利用するほどの活動ができないため」が31.3%、事業場は「サービス内容をよく知らないため」が33.3%と最も多くなっており、その内容が異なっている。しかしこの両者がどちらの群でも理由の1、2位を占めており、全国的にも同じ傾向が見られることから、将来、推進センターの利用度をあげるためには、センター自身のサービス内容のPRと産業医活動の積極的支援が重要であると考えられる。

(5)満足度の評価
 現在センターが提供している支援サービスを、その細目にわたって満足度を調査し、平成13年度の調査結果と比較した。窓口相談では回答・資料内容、対応・態度、回答の迅速性、専門的知識について、産業医で平均84点、事業場で平均75点の満足度であった。事業場では専門的知識に不満があり、回答者のレベルアップが求められる。
 研修、事業主セミナーでは内容、資料、講師、方法などで産業医、事業場に大差なく、75点前後の満足度であったが、開催日時に不満が残った。 図書・教材の量、内容、受付時間、貸出期日、手続きについて事業場は78点程度の満足度であったが、産業医は内容、受付時間に不満が多く、平均71点にとどまった。
 調査・研究の活用では、産業医も事業場も内容、利用の容易さに不満があり、平均の満足度は66~69点と低い値であった。全国的にもこの傾向は同様であった。
 産業保健情報システムについては情報量、内容、鮮度、提供方法とも問題が多く、産業医も事業所も63~66点にとどまった。全国的にも平均58点と低く、将来有効なツールだけに今後の検討が必要であろう。
 情報誌の利用については、内容、配布頻度で産業医により利用されており、平均74点と事業場の69.8点をやや上回った。

(6)サービスの需要度
 個々の支援サービスについて、今後の利用意向(需要)を尋ねた。産業医、事業場とも、窓口相談・実地相談の利用は各々14.1%、9.7%、情報システムの利用は6.9%、4.8%と極めて低調で、産業医の図書・教材の利用も11.3%にとどまった。これに反して将来「利用したい」ものは、各項目とも30~40%の率を占め、「利用してもよい」ものを加えると80~90%の需要度を示した。すなわち現在、実際に利用している頻度はまだ低いが、将来的にはいずれのサービスにも高い潜在的需要があることが示された。

まとめ

 設立5年間にわたる石川産業保健推進センターの活動により、センターの認知度と利用度は大幅に上昇し、全国並みのレベルに達した。しかし未だサービスの内容を明確に弁えていない産業医や事業場も多いので、今後も一層の周知・支援活動が求められる。
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